前月号で紹介した、特殊法人が設置した施設を傘下の公益法人が管理・運営する−−この種の「請け負い」専門の公益法人のもう一つの例に、厚生労働省(旧・厚生省)所管の財団法人「年金保養協会」がある。この財団は全国の大規模年金保養基地「グリーンピア」計一三施設(図表?)のうち四施設の運営を厚生労働省所管の特殊法人「年金福祉事業団」から委託されている。
親会社ともいうべき当の事業団は、事業の破綻の責任を問われて二〇〇一年三月末に廃止され、業務の大部分は新設の特殊法人「年金資金運用基金」に引き継がれる。だが、厚生省は、失敗したグリーンピア事業の全廃を決め、事業団は二〇〇〇年八月、高知県内の施設(「グリーンピア土佐横浪」)の一部を地元の学校法人に売却した。岐阜県内の施設(「グリーンピア恵那」)も二〇〇〇年四月末で運営を停止した。
年金福祉事業団のホームページを開いてグリーンピアの案内をみると、次のようにある。
《(「グリーンピア」は)厚生年金保険、国民年金保険の被保険者や年金受給者、ご家族が自然に囲まれて「ゆったり、ゆっくり、楽しく」くつろいでいただけるようにと、年金福祉事業団が設置・運営している施設です。一〇〇万坪の広大な敷地に、宿泊施設、スポーツレクリエーション施設等が設置され、ご年配の方からお子様まで、どなたでも楽しむことができます》
この説明は事実に反する部分がある。年金福祉事業団はグリーンピアを設置はしたが、その運営は前述した年金保養協会と地元の自治体に委託しているのだ。九施設を委託された自治体は、それぞれの県知事が許可した公益法人に運営事業を丸投げしている。
年金福祉事業団は、理事長が前代の幸田正孝氏に至るまで五代にわたり元厚生事務次官が天下り、現理事長の森仁美・環境庁事務次官も前身は厚生省大臣官房審議官という「厚生省の聖域」だ。いわば厚生省が、後述する経緯から大規模年金保養基地を建設し、運営は自らやらずに“身内”の公益法人に任せたのである。(後略)