記事(一部抜粋):2000年10月掲載

経 済

【企業研究】オリックス

「小判ザメ商法」真価を発揮か

日債銀買収で一番トクした金融界の異端児
 この九月四日、破綻して一時国有化されていた日本債券信用銀行がすったもんだの末、ソフトバンク連合に譲渡され営業を開始した。来年一月からあおぞら銀行と改称される新日債銀には、ソフトバンク約四九%、オリックスと東京海上が約一五%ずつ出資し、その他、サーベラスなど外資をはじめ、国内九六の金融機関が出資している。
 ところが九月二一日、経済界に衝撃が走った。社長に就任したばかりの本間忠世・元日本銀行理事が大阪市内のホテルで自殺していたことが明るみになったからだ。日債銀は、社外取締役としてソフトバンク社長の孫正義はじめ、オリックス会長の宮内義彦、東京海上社長の樋口公啓など一一人の財界人や学識経験者が就く米国流のコーポレートガバナンス方式で経営されるが、当面、小寺義信専務が社長代行を務めるものの、同行の先行きに暗い影を落としたことはたしかだ。
 日債銀譲渡がすったもんだの末だったというのは、金融監督庁(当時)はソフトバンク連合との交渉を続けながら、一時は交渉打ち切りを宣言したこと、そして譲渡直前になって新生銀行がそごうの債権を瑕疵担保条項によって国に引き継がせたことで、私企業を税金で救うのかという声が高まり、同じスキームを持つ日債銀の譲渡に待ったがかかったことである。
 だが、わずか一カ月で条件やスキームを変えるなどできるわけもなく、従来のままの条件で、譲渡が成立した。インターネット財閥を目指すソフトバンクではどうしても決済機能を持つ日債銀がほしかったし、金融監督庁側も一刻も早く手を離して、責任を回避したいという役人の本能があって、予定通りに落ち着いたわけだ。
 だがこの日債銀は、譲渡を受けた側にとってもきわめてリスキーな案件といえる。
 役人が譲渡を急いだことからもわかるように、日債銀の持つ債権は正常債権の中に不良債権が隠されている可能性が高い。質の悪い債権が多いのである。そのため、瑕疵担保条項に従って、劣化した債権は国に買い戻しを請求することができるが、それによって対象企業が倒産する引き金を引くことになる。そごうの場合がそうだったように、安易に倒産の引き金を引くことに批判が集中することが考えられるのだ。
(後略)

 

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