政界では出るクギは必ず打たれる。その例に漏れず、ポスト森への意欲を表面化させた加藤紘一へのバッシングが本格化してきた。加藤たたきに連携するのは森喜朗、野中広務、亀井静香のMNK政局辣腕トリオ。「来年夏の参院選前に加藤の(総裁候補としての)芽を潰せ」(亀井側近)が合言葉だ。修羅場が苦手な加藤は果たして生き残れるか。激しい闇闘が永田町で展開されている。
「森政権は完全に離陸して雲を突き抜け、一万メートル上空で安定飛行に入った。少々下からミサイルを撃っても当たらない」
相変わらず支持率低迷の森政権を、亀井が強気に持ち上げてみせたのは、九月一三日夜のパーティーだった。都内のホテルに集まった大半の自民党支持者は、怪訝な思いでその発言を聞いた。二一日に召集される臨時国会で、数々のスキャンダルや難法案を抱える森政権は窮地に立つと予想されていた。とても安定飛行などといえる状況ではないのに……。
永田町には東京地検の捜査の手が亀井に迫っているという噂がある。「その追及を撥ね返すために、亀井はわざわざ森政権の安定を協調している」と囁きあう出席者もいた。強固な政権の中枢にいる政調会長を逮捕するのは、いくら東京地検でも難しい。
だが、亀井の発言の真相は別のところにあった。それは「森政権を揺さぶっていた加藤の動きを封じ込めたという自信。つまり勝利宣言」(亀井周辺)だった。亀井が「下からミサイルを撃っていた」というのは加藤を指していた。ミサイルの具体的内容は、公明党の森政権からの切り離しだ。
八月下旬、国会に「Kファイル」という亀井周辺を詳細に調べた分厚い調査書のコピーが出回った。自民党の野党転落から自社さ政権にかけての期間に、公明党・創価学会攻撃の急先鋒に立っていた亀井に対抗するため、学会が会員などを動員して作成したものだ。なぜ、何年も前のファイルが今、すでに学会と亀井は協調関係にあるはずなのに出回るのか。亀井はそこに「加藤の影」を見た。
「神崎がまた変な発言をしている。あんた厳重に注意してくれ」
(後略)