記事(一部抜粋):2000年10月掲載

ベルダレポート

「モラルより目先のマネー」起業家と詐欺師は紙一重

帳尻さえ合えば何をやっても許される

「兜町の新風雲児」ともてはやされた古倉義彦容疑者(三九歳)の正体は、証書の偽造で、乗っ取った企業から資産を収奪する詐欺師だった。仏の有力銀行であるインドスエズ銀行のCD(譲渡性預金)の証書だと偽って、中米のバンク・インドスエズ・インクという紛らわしいペーパーカンパニーのものを渡す。あるいは香港の実体のない会社であるユニオンフォードの社債に、香港上海銀行の保証がついているとウソをいい、だました大正生命に売りつけていた。
 一九九七年末から九八年にかけて、中野証券、日刊投資新聞、上毛撚糸、三洋投信委託と次々に買収していた時、古倉容疑者の資金源に関心が集まった。それまでに同容疑者が所有していたのはクレアモントホールディングカンパニー、トーキョウ・アソーシエイテッド・キャピタルといった横文字の金融会社だったが、いずれも資産のない投資運用会社で、銀行から融資を受けて買収するだけの信用も資金力もない。そこで大手消費者金融会社などのスポンサー説が流れたものの、「私には海外の有力資産家がついている」と、古倉容疑者は否定していた。
 一橋大学を卒業後、野村証券に入社。M&A業務に携わりたくなってJPモルガン銀行に移りニューヨークの本店勤務。帰国後は伊フォルテ財閥の資産運用を任されて日本法人(ファーストノーザンファイナンス)の代表となった−−という古倉容疑者の高学歴、欧米経験が、大正生命を始めとする乗っ取られた企業や監督官庁である金融庁の判断を狂わせた。しかし、古倉容疑者の編み出した詐欺の手法は、海外法人を利用しただけのお粗末なもので、その単純さは「二割の現金で残りの八割を融資します」という二八屋や、手形のパクリ屋、地面師といった“手合い”となんら変わるところがない。
(後略)

 

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