金融庁によると(図表 )、都銀から農協系統まで合算した金融機関の問題債権(第二分類 四分類の合算)は一九九九年度末現在、八一・七兆円と前年度末を幾分上回った。名目GDP(国内総生産)の一六・六%に当たる巨額だが、この査定結果をそのまま鵜呑みにはできない。
なにしろ、問題債権は単独ベースで自己申告という眉唾物だからだ。破綻した長銀や日債銀が幽霊会社を設立し、大半の不良債権を飛ばしていた事実などから判断すると、とても信用できるものではなく、八一・七兆円は相当過小に見積もった数字と考えられる。
さらに問題債権の大半は第二分類(要管理債権)に区分されている点も信憑性に疑念を抱かせる。問題債権の九六・四%に当たる七八・二兆円が灰色の第二分類で、第三分類(危険債権)は三・五兆円に過ぎず、問題債権の大部分は将来正常な債権に生まれ変わる可能性が高いと評価されているからである。だが、土地担保融資の動向などから推計すれば、第三分類以上の腐った債権は優に一〇〇兆円以上あるはずだ。
八〇年代、預金の増加に対して貸し出しは伸び悩み、銀行は融資を拡大するために不動産融資にのめり込んでいった。全国銀行の預金は七九年度の一六六兆円から八九年度には六一九兆円へと一〇年間で三・七倍に急増した。貸し出しも増加はしたが預金ほど伸びず、余剰資金は株式市場に雪崩れ込んでいった。実体経済に使われるカネには限りがあり、溢れたカネは土地・株に向かった。
(後略)