記事(一部抜粋):2000年9月掲載

連 載

【検証】メディアの新世紀

 読売グループ「知られざる野望」

(前略)
 日テレに視聴率トップの座を奪われたフジテレビの幹部は表情に一種の恐怖感も浮かべながら「日テレの戦略は、明らかにテレビ界を超えて、メディアというメディアは旧も新も呑み込もうという奴だよね。しかも日本ローカルじゃなくて世界戦略だ」と言い、「単に日テレの放送戦略というより、渡辺氏の読売新聞が率いる読売グループ全体の大いなる野望だと思う」と話した。
 すなわち(中略)、「紙の新聞が消える日」あるいは「テレビがインターネットに負ける日」をも想定して、ありとあらゆるメディア、テレビ・ラジオ・映画・音楽・DVDをはじめとする新種AV、ゲーム、そして通信社すなわちニュース配信業界を丸ごと、独占する戦略に出ているという『分析』である。
 NHK関係者は、フジテレビ(資本金約五百九十八億円)が日テレ(資本金百八十六億円)より四百億円以上大きな資本を持ちながら、二〇〇〇年三月期の経常利益は三百三十億円で、日テレの五百二十六億円に比べ約二百億円も劣っている事実を指摘し、「民放界は読売グループの一人勝ち状態が加速する。いずれ、わが方を凌駕しかねない」と警戒感を露わにする。
 このNHK関係者は先に読売新聞が中央公論を吸収した事実も改めて指摘し、「メディアというメディアは食い尽くす野心が表れている」と強調した。
 そして現役の読売新聞政治部記者は「われわれ旧態依然たる記者職の連中は、いつ何時どこに行かされるか分からない。その不安は正直あるね。我が社では経営者への反抗は絶対、許されないから」と話すのだ。
 この記者に仙台の事件(読売記者の記事盗用問題)を聞いてみると、「確かに、これまであり得なかったタイプの盗用事件だなぁ。今までにない不安があるから、正常な判断力を失っているーというのは、内部の人間には説得力のある”犯行理由”だよ」と頷いた。
 野球と同じく、なりふり構わず一人勝ちを狙う読売グループ。今にこの本誌本連載のようなタブーなき批判は、読売に対しては許されない時代が来るかも知れないのである。

 

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