記事(一部抜粋):2000年9月掲載

政 治

政権奪取の助走に入った加藤紘一 

「誰が首相でも自民党の敗北は確実」−来年夏の参院選が悩ましい

 ポスト森に向けて加藤紘一が助走に入った。自民党内に満ちている「来年夏の参院選挙は森政権では戦えない」という声が加藤にエンジンをかけた。森からの禅譲はもはや念頭にない。自民党内はもちろん、公明党や民主党にも大きく網をひろげ、森喜朗が自ら躓くのを待って、力づくで政権を奪取する作戦。いつ、反森の旗を高く掲げて本格的戦闘に突入するか、加藤は虎視眈々とそのタイミングを図っている。
 加藤は夏の旧盆をはさんだ期間の外遊先に中東を選び、一〇日間の日程でイスラエル、ヨルダン、シリア、エジプトの各国を歴訪、パレスチナ自治政府高官とも会談した。米国が当面の最大課題としている国際問題はイスラエルとパレスチナ自治政府の平和交渉。中東歴訪は、「米国政府にポスト森の再有力候補と認知させるのに、もっとも効果的」という外務省高官からのアドバイスで、加藤が自ら決めた外遊だった。
 ヨルダンでは、会談したアブドラ国王から、前触れもなく外国の首相クラスに贈られる「勲一等独立章」を授与された。加藤は国王に「ヨルダンに足を踏み入れたときから、自分がこの国の首相だったら、一体どうやって水を確保しようか考えていた」と述べ、さりげなく自分がポスト森の再有力候補であることをアピールした。
 加藤の心中は現在、「いつ、ポスト森の首相候補争いが表面化するか。自分がその火付け役になるべきかどうか」で間違いなく一杯になっている。七月二五日、大阪市内で行った講演では、「国を引っ張っていく理念と政策があって、連立を考えて行くという筋立てでないと、単に政権維持のためだけでは国民の支持を得られない」と、支持率低迷にあえぐ森にジャブを放った。しかし、現状では加藤派は森政権にたいして反主流の立場はとっていない。本格的戦闘に突入するのは、まだこれからなのだ。
(後略)

 

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