昨年十一月にイトマン事件の許永中被告が身柄を収監されて以来、数々の事件が捜査当局によって摘発された。石橋産業詐欺事件、犯人隠匿事件、中尾栄一収賄事件−−いずれも事件の性質と適用される刑法は異なるが、許被告を“主犯”とする事件であることに違いはない。
そこには「日本一の仕事師」にして、「アングラ経済のドン」「西と東の暴力団の仲介役」など、さまざまな異名で語られる許被告のような存在を、決して許さないという検察の強い意思があった。
「時に暴力装置をチラつかせながら、飲食の接待やカネや女でターゲットを籠絡するのが許永中の手口です。それだけなら単なる事件屋で検察がムキになることもない。ところが許は、イトマン事件で息の根を止めたはずなのに、前以上に手ごわい存在となって復活した。しかも許を大きくしているのは、大物政治家や官僚たち。その構造を決して許さず、許永中関連は、徹底的に暴くというのが検察の方針でした」(司法担当記者)
中尾栄一・元建設相が保釈され、許被告の「政界窓口」である福本邦雄フジ・インターナショナル・アート社長が処分保留で釈放され、永田町には「これで事件は終結した」というムードが漂う。特捜部も遅ればせながらの夏休みを取った。しかし、捜査が終わったのは「中尾事件」までだ。(後略)