記事(一部抜粋):2000年8月掲載

経 済

【企業研究】旧長銀・日債銀

金融界の鬼っ子の命運

(前略)
 新生銀行の本質的な問題として露呈したのは、まさにこの瑕疵担保条項にほかならない。そごう問題を集中審議した七月一七日の衆議院大蔵委員会では、新生銀行がそごう向け債権のほかにも、預金保険機構に三四件の買い戻し請求を行い、金融再生委員会がことごとく了承していたことが明らかにされた。新生銀行が瑕疵担保条項による収益インセンティブ・メカニズムを、すでにフル活用していることが判明したのである。
 旧長銀を買収したリップルウッド社が、譲り受けた旧長銀の資産から発生する二次ロスへの対応措置を求めて実現したのが、この瑕疵担保条項である。事業譲渡後、三年以内に二割以上の原価があった資産については、預金保険機構が簿価で買い戻すというのが、その骨子だ。
 ところが、例えばそごう向け貸出債権の場合、事業譲渡以前の段階で、国はかなりの貸倒引当金を公的資金によって積んでいた。(中略)
 こうした破格の引当を積んだうえで、旧長銀の資産はリップルウッド社に譲渡され、新生銀行は誕生した。その新生銀行が今回、そごう向け貸出債権を国に売り戻した。
 ここで特筆すべきは、新生銀行が売り戻したのは貸出債権だけであって、それに施していた貸倒引当金は切り離されて新生銀行に残ったということである。新生銀行が引き継いだそごう向け貸出債権は前述のとおり約二〇〇〇億円。「どう考えても貸倒引当金は数百億円の規模に達している」(都銀幹部)
 新生銀行は、この巨額資金をまるまる懐に残し、次の決算では業務純益として利益に計上できるわけだ。
 一方で、そごうに融資をしていた他の銀行は、今回の法的処理で巨額の損失を余儀なくされる。「地銀や第二地銀には、今度の九月中間決算で赤字に転落するところが続出する」(地銀)懸念すらある。
 ところが新生銀行だけは大儲け。ある地銀役員が「まるで火事場泥棒」と新生銀行に対する嫌悪感を丸出しにするのも無理からぬ話なのである。
(後略)

 

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