記事(一部抜粋):2000年7月掲載

経 済

【企業研究】ゲーム業界

 「ソニーの一人勝ち」は崩れるか

 一九九九年度のゲームの各社の決戦が出揃った。主要八社の売上高合計は一兆五五四億円(単独ベース)で前年比一%弱増と横這い。経常利益は七八四億円で五四%もの減少だった。家庭用ゲーム機サターンが失敗したセガ・エンタープライゼス(セガ)が在庫整理などで大きな損失を計上したことの影響が大きいが、高収益を維持してきた任天堂の四四%減益も響いている。
 一九九〇年に一兆円産業の仲間入りをして以来、バブル崩壊の影響を受けて下降を続ける景気の波に逆らうように好調を維持してきたゲーム産業だが、どうやらゲームの世界も「踊り場」を迎えたようである。
 資料 と は、主要ゲーム会社八社の業績推移を示したものだ。八社の売上高合計は約一兆円にのぼっており、業界の趨勢を表していると考えていい。この表からは、数字は高水準ながら横這い傾向であったことが分かる。ゲームは好況業種だという世間の受け止め方とはギャップがあるのだ。
 この数字には実は裏がある。非上場で単独の決算を公表していないソニー・コンピュータエンタテイメント(SCE)が含まれていないのだ。SCEは九四年一二月に新ゲーム機「プレイステーション」(プレステ)でゲーム産業に参入し、九六年三月期以降急速に業績を伸ばしている。親会社ソニーの連結決算のセグメント情報によれば、ゲーム部門の業績は九九年三月期に売上高七六〇〇億円、営業利益は一三六五億円にのぼる。二〇〇〇年三月期はゲーム機の機種切り替えにあたったため、売上高は六三〇〇億円、営業利益は七七三億円に低下したが、それでもSCE一社だけで主要八社の半分を上回る業績を上げていることがわかる。 SCEの数字を加えれば、主要会社の業績は九八〜九九年のピークに達するまで、確かに上昇基調にあったことになる。ゲーム産業の好調は、SCEの一人勝ちに支えられていたわけだ。
 ゲーム会社は業績の変動が大きいのが特徴だ。資料の○印内の数字は年度ごとの各社の順位を表しているが、その変動が大きいことが分かる。家庭用ゲーム機の性能がよくなり、ゲームユーザーの中心がゲームセンター向けの業務用から家庭用ゲームに移ってから、この傾向はますます強くなっている。ゲーム機(ハード)のメーカーでも、ソフト制作が中心のソフトハウスでも、この傾向は変わらない。
 日本のゲーム産業を代表する主要八社&SCEは、大別すると家庭用ゲーム機(プラットフォーム)を生産するメーカーと、ソフト制作を中心とする専門メーカーとに分けられる。家庭用ケーム機の大部分は、任天堂、セガ、SCEの三社によって供給されている。ハードを供給し普及させるには企業体力が必要だ。
(以下、略)

 

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