A 何はともあれ、今回はあさひ銀行の統合離脱問題を触れないわけにはいかない。再編問題の行方が俄然面白くなってきたから。世の中を面白くさせるという意味では、あさひは殊勲賞モノだね。
B 東海との二行統合の時点で、すでに先行きが危ないなと思っていたけれど、やはり、あさひは抜けたね。マスコミは、いろいろとその原因を挙げているが、根本的には、あさひは、大手銀行ベースの再編劇に、本来、登場するような存在ではなかったと思う。これが、祟って統合離脱となったという感じだ。
C その通りだね。都銀と地銀が対等に手を結ぼうというような話だったから。東海とあさひは、地域地盤を有しているという点では共通しても、経営の方向性があまりに違う。あえて言えば、東海という存在が中途半端だ。全国展開と地域展開のどっちつかずで、三和にもあさひにも似た表情をしている。
A おまけに、実力者だった西垣前会長と小笠原頭取の間に隙間風が吹き出したから、いけなかった。それを予知して、西垣氏は、小笠原シンパの役員を自分の退任とともに退かせたが、これも、小笠原氏には面白くなかったようだ。そこで、一挙に独自色を出そうとして、統合ではなく、合併などと提唱してしまった。強引さは、決して良い結果を生まないが、それをやってしまったわけだ。
B この間の再編には、実現まで長い期間を置いた計画であり、しかも、一般的に言って、経営実態がよくないという銀行が絡んだケースほど、二段階の統合としているという特徴がある。どの銀行のトップもあれこれと理由付けしているが、これには、不良債権処理に伴なう税効果会計の関係が密接に絡んでいる。要するに、不良債権の最終処理をするほど、税効果で自己資本比率を維持、向上できる。この恩典は、個別銀行ごとに与えられるから、前倒し的な合併で恩典がなくなるよりは、ゆっくりと統合、合併したほうがいいという判断になる。その結果がスローモーな統合計画となるわけだ。
C 逆にいえば、計画前倒しの合併は「話が違う」ということになりかねない。それがあさひ離脱にも当てはまる。
B そういうことだ。税効果会計の導入は企業会計上、正しい措置だし、不良債権の最終処理を促すこともまちがいない。しかし、一方では、経営者のモラルハザードを生んでしまう。
Aこれ以上、モラルハザードが高まったら大変だ(笑)。
(以下、略)