ベルダレポート
ナスダック・ジャパンは「胴元が自ら張る博打場」
市場の公平・公正を阻害する「孫正義の私場」批判にどう応えるか
米店頭株式市場(ナスダック)の日本拠点であるとともに、東証マザーズに続く新興企業向けの市場となる「ナスダック・ジャパン」が六月一九日、大阪証券取引所で取引を開始した。フランク・ザープ全米証券業協会(NASD)会長を招いた式典や記者会見などの行事もあり、初日は波乱なく、上場した八社とも公募増資価格や先週終値近辺(他市場からの乗り換え)で取引を終えた。
「落ち着いたスタート」(日本経済新聞)と、マスコミは総じてナスダック・ジャパンを冷静に受け止めた。ネットバブルの崩壊という「最悪の事態」(ナスダック・ジャパン関係者)を乗り越えての静かなスタートに、まずはエールを贈ったということだろう。
しかし、この新市場にはこれから試練が待ち受ける。「孫正義の私場ではないか」という批判を真摯に受け止めることなく、見切り発車したからだ。市場運営会社「ナスダック・ジャパン社」に五〇%の出資をするのはソフトバンク。社長の孫氏は、マーケットの”ご意見番“である日本ナスダック協会の副会長も務める。同時に、ナスダック・ジャパンの上場予備軍を育成する「ナスダック・ジャパン・クラブ」の創設者である。
マーケットも、ルールも、参加者の選定も、すべて孫氏に委ねられる。投資家は、孫氏の公平性を信じて賭けるだけ−−こんなマーケットは聞いたことがない。
「行司が相撲を取るようなもの」「アンパイアがバットを振るようなもの」「中央競馬会が自分の所有馬を走らせているようなもの」−−。
孫氏が支配するナスダック・ジャパンは、こうしたわかりやすい比喩で批判され続けてきた。しかし孫氏は、最後までそれに耳を貸さず、ゲートを開き八頭の競争馬にムチを入れたのである。
孫氏の長年の知人は「孫氏の私場」の将来をこう憂う。
「ナスダック・ジャパンがうまくいけば、『ソフトバンク傘下の企業とソフトバンクだけが儲かっているじゃないか』と、批判される。逆にうまくいかなくて投資家が損をすれば、『ソフトバンクのせいだ』ということになる。マスコミの孫バッシングが予想される」
(以下、略)