記事(一部抜粋):2000年5月掲載

社会・文化

佐川急便でまた「裏ガネ疑惑」

人材派遣会社からキックバック?

 リクルート、イトマン、東京佐川――バブル景気を挟んだこの十数年間、政財界を巻き込んだ大型経済事件は数多いが、これらの事件は時として、意外な端緒から発覚し、予想外の展開を見せる場合が珍しくなかった。本稿で紹介するのもそうした予想外の事件の典型的ケースかもしれない。
 事の発端は昨年起きた小さな恐喝事件だった。新聞記事もベタ記事扱いで、たとえば東京新聞は一九九九年二月二一日付で「目黒区議から恐喝未遂容疑、政治団体幹部を逮捕――警視庁」という見出しの下、《警視庁公安部は二十日までに東京都新宿区、政治団体幹部を恐喝未遂の疑いで逮捕した…》と伝えている。要は団体幹部が、九八年一〇月の目黒区議選に絡んで、選挙違反の資料をネタにして六九歳の目黒区議からカネを脅し取ろうとした事件である。その後、昨年九月には同団体の構成員が太田区内の病院理事長を恐喝し、警視庁捜査四課に逮捕されている。いわば、どこにでもあるようなありふれた恐喝ならびに恐喝未遂事件である。
 ところが、この事件で警視庁は思わぬ収穫を得たという。ある捜査関係者が話す。
「警視庁公安部公安三課がこの幹部を調べていたのだが、家宅捜索の結果、佐川急便の不透明なカネの流れをつかんだのです。幹部が関与した人材派遣会社と佐川の子会社との取引におけるキックバックです」
その佐川急便の子会社とは「佐川ロジテック」で、人材派遣会社は 「羽田タートルサービス」「キャリアエージェンシー」「光」の三社。
 東京佐川急便事件後、佐川急便は京都佐川、北陸佐川、東京佐川、といった地域ごとの独立採算制をやめ、京都本社で業務や収益を一括管理するシステムに切り替えたのは周知のとおり。と同時に、事件で労働基準法違反を問われたドライバーの無茶苦茶な勤務形態を見直してきた。
 業務改善の一環として取り組んできたのが、人材派遣会社との業務提携による配送システムだった。荷物の積み込みや運送、倉庫管理などを派遣会社からの人員でまかなうようにしたのだが、こうした業務改善の中で、今回の疑惑が浮上してきたのである。

 

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