記事(一部抜粋):2000年5月掲載

経 済

【企業研究】コンビニ5社連合

「ネット時代の寵児」に影落とすFC問題

 バブル崩壊と金融ビッグバンの中で、日本を代表してきた企業が次々と凋落していくのに代わって、コンビニエンス・ストアがインターネット革命の追い風を受けて経済界のエースに躍り出てきた。こう書くと、ほんの一年前まで騒がれていた問題ーーFCオーナーが法外なロイヤルティーに象徴される不利な契約によって本部に“収奪”されてきたことをマスコミに報道され、一種の社会問題にまでなったのは、いったい何だったのかという疑問が沸いてくるが、その点は後述するとして、いまやコンビニは、金融、旅行、書籍、チケット、音楽、自動車、通販など、ありとあらゆる業界から熱い視線を投げかけられるネット時代の“希望の星”である。
 現金自動預払機(ATM)を使った金融ビジネスの拠点として、またインターネットのオンラインショッピングでは商品受け渡しや決済の拠点として、充実した店舗網がもち二四時間三六五日営業しているコンビニほど適した存在はないという認識が広がったからだ。この一年あまりの間に、コンビニは一躍時代の寵児に躍り出たのである。
 ミレニアムの年が明けた一月五日、コンビニ最大手のセブンーイレブン・ジャパンは、ソニー、NEC、JTBなど七社と手を組んでeコマース(電子商取引)のための新会社 「セブンドリーム・ドットコム」を設立すると発表した。昨年末にイトーヨーカ堂がセブンーイレブン店舗を中核とする決済専門銀行の設立計画を発表して経済界にショックを与えた後だっただけに驚きは大きかった。と同時に、eコマースの本命はコンビニであることを改めて印象づけたのである。
 その一〇日後の一月一五日、今度は三菱商事が、コンビニ業界二位、ローソンの発行株式の二〇%を一七〇〇億円で買い取ると発表して改めて衝撃を与えた。
 二兆六〇〇〇億円の有利子負債を抱えて経営再建に取り組んでいたダイエーの切り札は、もともとローソン株上場での上場益取得にあると言われていたが、電子商取引化の波は、ローソン株の価値を一気に引き上げた。商事はローソン株を一株あたり一万円を上回る値段で買ったのである。
 もともとローソンと最もつながりの深かった商社は丸紅で、両社はすでに包括的提携関係にあった。そのためローソン株取得は丸紅が有利と見られていたが、曲折の末、最後は三菱商事が射止めた。商事にとってローソンは、既存の取引関係を壊してでも、何としてでも陣営に引き込みたい相手だったということだ。
 BtoC(企業から消費者)ビジネスを展開していくうえでは、全国で七〇〇〇〜八〇〇〇店の店舗網を持つコンビニチェーンとの提携が欠かせないという認識が、多くの企業にはある。今後、インターネットを使った買い物が普及するにしても、商品はパソコンや携帯電話の端末から出てくるわけではない。実際に商品の受け渡しをしたり、代金の決済をする拠点が必要になる。そのための最適な場所が日本中いたるところにあるコンビニというわけだ。

 

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