今回は、日本のテレビ・メディアの運命、すなわち端的に言って「果たして二一世紀に生き残ることはできるか」という包括的なテーマを考察する。
まず、米国のテレビが、いかなる情況にあるかを見てみよう。「米国資本は、日本のマスメディアを支配することをターゲットに、やがて動き始める」(郵政省高官)からだ。
米国の大統領選挙は、ジョン・F・ケネディがリチャード・ニクソンに戦いを挑み、討論会でのテレビ映りの良さのおかげで勝利して以来、テレビがリードする国民行事となっている。二〇〇〇年の米大統領選挙も、相変わらずテレビ画面を主戦場に戦われている印象が強いから、変化はないように見えるが、実は「マスメディアからメガメディアへ」という激変が進行している。メガメディアとは、既存のマスメディアを、ジャーナリズムとは関係のない巨大資本が買収しメディアの新しい寡占状態をつくり出していることを意味する。
米テレビ界の主要ネットワークのうち、ABCテレビはウォルト・ディズニーの傘下に組み入れられ、NBCテレビは電機会社のゼネラル・エレクトリックが合併した。CBSテレビは、ケーブルテレビなどを支配する総合メディア会社のバイアコムに吸収されようとしている(買収を申請中)。
この三つのメガメディアに拮抗しうるのは、世界最大のインターネット接続会社であるアメリカ・オン・ライン(AOL)とタイム・ワーナーの連合軍、それにマードック氏が所有するニューズ・コーポレーションの二グループぐらいである。
「米国民主主義の良心」とも言われるジャーナリスト、ディヴィッド・ハルバースタムは、このメガメディア支配が米国ジャーナリズムの死をもたらすという視点で警告しており、「メガメディアが関心を持つのは、新聞を購読する人でもテレビを見る人でもなく、ただ株を買う人だけである」と述べている。
すなわち、メディアの社会的使命は忘却し、他のビジネスと同様、株価を釣り上げて時価総額を増やすことのみを目指す経営を行っているという指摘である。事実、たとえばABCテレビは、支配資本であるウォルト・ディズニーの社員が幼時への性的虐待で有罪判決を受けたニュースを、主要テレビでただ一社、ボツにし、「公平な報道というジャーナリズムの基本を踏み外した」と批判されている。