米連邦準備制度理事会(FRB)は先に、現在の金融引き締め局面としては五回目の利上げに踏み切った。市場が予想していた通りの動きで、ニュースの扱いも毎回徐々に小さくなりつつある。
だが、それこそFRBの狙い通りなのだ。いくら最善の金融政策を練り上げたとしても、市場が驚くほどのものなら、それは市場の過剰反応となって表れ、場合によっては逆効果になりかねない。政策の執行方法は政策内容そのものと同等に重要なのだ。当局としては、その辺りを考慮したうえで発表しているのだ。 FRBが現在のような政策運営方法を取り始めたのはそんなに古いことではない。実は、まだ試行錯誤が続いているのである。
FRBは年に八回、金融政策の最高意思決定機関である連邦公開市場委員会(FOMC、日銀の政策委員会に相当)を開き、当面の金融政策を決定する。その決定が最初に伝えられるのが米財務省の記者室だ。少し“舞台裏”をのぞいてみる。
通常のFOMCの場合、当日午後〇時半ごろには会議が終了し、同二時一〇分ごろに財務省記者室のダウ・ジョーンズ通信のファクスにFOMC声明が送信されてくる。その時点で記者室のドアは閉鎖され、電話はすべて遮断し外部との接触が断たれる。たとえ電話中だったとしても、理由を説明せずに一方的に電話を切ることが義務づけられている。
通常は決定内容とその理由、背景などが書かれたA4の用紙一枚が送付され、同ファクスが入り次第、報道各社にコピーが回る。それから三分間のカウントダウンが始まり、記者たちはその間に声明を読み、速報用の記事を書き上げる。そして、記者室の壁に掛けられた鐘が鳴らされるのを合図に、情報が一斉に世界の金融市場へと流れていくのだ。
市場はそのニュースを受けて、FRBの真意を読みとろうとし、その結果が株価や為替相場の変動となって現れることになる。が、時に声明の表現だけでは当局の意図が十分伝わらなかったり、逆に受け止められることもまれにある。また当局としても予想外のタイミングで政策金利を変更したりして、市場により効果的にメッセージを送ろうとしたこともあった。