記事(一部抜粋):2000年4月掲載

ベルダレポート

グローバル化の裏側で動き出した「情報支配」

「国家の安全」を理由に、通信傍受やインターネット規制を推進

 経済のグローバリゼーションが進展し、弱肉強食性が強まる中で、「国家」という共同体を維持するため、中央集権を強化し、統制力の増大を図る古い国家主義的手法が先進各国の間で復活してきた。「国家の安全」を理由に、国家が通信傍受やインターネット規制を通じて国民を一元的に情報管理しようとの動きが目立つ。
 新聞・テレビに先駆けて本誌が昨年一一月号で報じたように、米NSA(国家安全保障局=NationalSecurityAgency)が主導する米英など英語圏五カ国を結ぶ秘密のスパイ・ネットワーク「エシュロン(Echelon)」(世界の電話、ファクス、インターネット系通信の傍受・解析)が、その先端を行っている。が、他方で問題解決能力を失った日本のように、政治の「総与党体制」、金融・経済の「国家管理化」で危機打開を図った戦時体制に返るかのような全体主義ふうの対応も現れてきた。
 九○年代半ば以降、世界に吹きまくっているグローバリゼーションには、二つの大きな産物がある。
 一つは、「経済のボーダレス化」であり、結果、もたらされる地球的規模での「大競争」である。体制が崩壊した旧ソ連・東欧圏と一二億の人口を抱える中国が資本主義市場に参入したことと、米国が主導するインターネットを核とした情報技術(IT)革命が、市場の拡大、競争の低価格化とスピード化の面でとりわけ重大なインパクトを引き起こした。
 もう一つは、グローバルな商品、サービス、ライフスタイルが普及することからくる「地域共同体に対する破壊作用」だ。これらの産物は、グローバル化の進展とともに拡大再生産されつつあり、その社会的影響は日増しに広がっている。
 グローバリゼーションもまた、過去のあらゆる急進的な運動と同様、「正の遺産」とともに「負の遺産」を社会の至るところにまき散らす。
「経済のボーダレス化」をとってみよう。マクドナルド・ハンバーガーの例を挙げるまでもなく、関税や非関税障壁が取り払われるにつれ、消費者は「安くて簡便で均質なモノ・サービス」を大都市の随所で享受できるようになった。
 他方、日本の企業活動もボーダレス化により世界の誰にでもわかる財務内容や製品内容の表示を迫られるから、企業の曖昧だった情報開示はいっそう透明化を求められる。

 

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