テレビ局がなくなる時は来るのか−−この問いかけは、視聴者にとってはまだ現実味が薄いだろう。だが放送界内部では、既に真顔で語られている。
在京キー局の役員は「インターネットの脅威は想像以上だと分かってきたから」と言い、「危機感を持つ者は悲壮なまでに近未来を心配し、呑気な者は、こんなに女にもてるテレビ局が滅びるはずはないと思い込んだままだ」と、あくまでニコリともせずに話した。
この役員を含め、先を真剣に読もうとしている放送関係者が懸念しているのは、インターネットの「動画」の発達である。
文字情報からスタートしたインターネットは、いま現在はデジタル画像が中心だ。といっても、静止した写真か、いくらかの動きを伴ったアニメーションにとどまっている。動画については、動き自体まだまだテレビに比べ大きく見劣りするうえ、何よりも手順が煩雑である。
パソコンの電源を入れて、システムが無事に立ち上がるのをじっと待ち、それから電話をかけてインターネットにアクセスし、動画を見つけるとダウンロードを始め、それが終わるのをじっと待ち、やっと画像が動き出したかと思うと数十秒で終わってしまう。テレビの簡便さに比べるべくもない。
ところが、大手プロバイダー(ネット接続業者)の役員は「あと二年もすれば、テレビ並みの画質と簡単操作で、インターネット動画を見ることができます」と断言する。
すでに「ボタン一つでネットにつながる」ことをセールスポイントにしたパソコンの発売が続いている。また、大画面で、しかも超薄型のディスプレー(画面)の別売りも盛んになっている。
動画を楽に見ることができるようになると、パソコン本体を居間に一台置いて、それを電話でなくローカルケーブル(ケーブルテレビが敷設)を使って二四時間インターネットに安価な定額料金でつなぎ放しにし、本体と無線で結んだ数台のディスプレーを各部屋に置く、というスタイルが考えられる。
こうなると事態はガラリと変わる。