記事(一部抜粋):2000年3月掲載

社会・文化

自殺者まで出た「石橋産業事件」の行方

住友信託元役員が果たした役割

 「闇の紳士」「地下経済の帝王」こと許永中の周辺が俄に慌ただしくなってきた。昨年十一月、逃亡以来約二年半ぶりに身柄を拘束されて以後、大阪地検に身柄を移されて拘置所暮らしを続けていたのもつかの間、今年に入って犯人隠匿教唆容疑で逮捕、再逮捕されたかと思えば、その逃亡に荷担していたとしてかつての側近たちが次々と逮捕。最近も自らのクレジットカードを使用させたりホテル宿泊の便宜を図ったりしていた現役の弁護士までが逮捕され、さらには、とうとう自殺者まで出てしまった。この一件、かねて注目されていた石橋産業事件の捜査にどんな影響を及ぼすのか。
 自殺したのは、井手野下秀守(六〇歳)なる人物。
「遺体が発見されたのは二月六日の夕方頃。場所は港区新橋のシティホテル『第一ホテル東京』十六階の一六二二号室だった。男は前日の夕方にチェックインし、この日の正午にはチェックアウトする予定だったが、いつまでたっても部屋から何の連絡もないので不審に思った従業員が部屋に入ったところ、浴室のバスタオル掛けに浴衣の腰紐を引っかけて首を吊っているのが発見された。所轄の愛宕署の調べでは、死亡時刻は同日未明。外傷もなく、部屋には遺書らしきメモもあったために自殺と断定した」(警視庁関係者)
 この自殺はその後三日あまりはマスコミにも発表されることなく、ごく一部の関係者にしか知られていなかったが、九日になって東京地検サイドから情報が漏れ、取材記者たちが大騒ぎし始める。
「第一報では、東京地検特捜部が参考人として事情聴取していた相手が殺されてしまったという他殺説も流た。その当事者が井手野下氏だというので、一時は我々の間でもかなりの騒ぎになった」(司法記者)
 それもそのハズ、この井手野下という人物、石橋産業事件について取材している記者たちにとってはよく知られた存在だった。

 

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