アジア通貨市場に関しての情報・分析に関しては一、二を争う米国のファンドマネージャーはこう言う。
「一九九八年の夏にアジア市場で暴れまくったヘッジファンドが、ここにきてアジア通貨を狙い始めた」
そう言えば、ここ一年ほどヘッジファンドの運用成績は振るわず、鳴りを潜めていた感が強かった。
「彼らはインドネシアやマレーシアなどを狙う前に、それなりに整備され流動性もあるシンガポールの通貨市場を舞台に試し運転をするのではないか」と先の米国人は言う。
米国の投資信託業界では今、グローバル運用に必要な情報・通信コストの増加に中堅どころはついていけず、かなりの淘汰が始まった。その結果、投信の運用資産の五五%は投信大手一〇社に集中してしまった。大手と一芸(特定の市場あるいは投資対象に強い)に秀でたブテック型投資顧問会社の二つに大別されてしまったといえる。どっちつかずの中途半端なところは、生き残りをかけて手荒なことを仕掛けてくる可能性が強い。
また、巨額資金を運用するファンドマネージャーが投資対象を限定して、かなりの資金を割り当てる可能性も高まり、市場のボラティリティ(不安定性)は今後高まると予想される。
そのような資産運用会社やヘッジファンドの動きから、リスクマネーにかなりひと儲けのマグマが溜まっている状況といえる。よって、流動性が少なく乱高下しやすいアジア通貨を狙うのはある程度予想できる。
通貨取引というと円やドルということになるが、市況商品(コモデティ)の代表である原油も、プロのファンドマネージャーからみれば「バレル」という名の通貨である。円/ドルの変動率(年率)は過去一〇%台であるが、もう一つの通貨バレルは、時には一〇〇%もの変動率を持つ。よって、リスクテイクには都合のよい存在である。
ここ半年間、円/ドルは一〇五円から一一五円のレンジで動きそうであり、短期の投機対象としてはあまり面白くないと思われる。それよりもドル/バレル(ドル建て原油価格)の「通貨レート」に賭けるほうがずっと面白いことになる。