韓国では四月の総選挙に向けて、激しい政治地殻変動が起きている。
経済が国際通貨基金(IMF)の管理体制下に置かれた一九九七年末の「IMF危機」は、韓国にとって「朝鮮戦争以来の最大の国難」と言われたが、九八年二月に登場した金大中大統領の強力なリーダーシップのもと、果敢な金融・経済改革の推進で、この危機は予想より速く克服された。九八年の国内総生産(GDP)成長率はマイナス五%台、外貨準備高は三五億ドルだったが、九九年にはそれぞれプラス九%、約七〇〇億ドルとなり、急速な景気回復を示した。
それにもかかわらず、政権の基盤は揺らいでいる。大統領が総裁を務める与党・国民会議の支持率は九九年四月の四一%から同一二月には二九%と急落、就任直後は七割あった大統領の支持率も五割に落ちた。
「高級服ロビー事件」「労働者ストつぶし事件」「中央日報弾圧事件」など、権力周辺で相次ぐスキャンダルに国民の政治不信が募る一方、企業構造調整の強制による失業者急増など、貧富の差が拡大したことへの労働者はじめ低所得者層の不満が、その背景にある。
かつての人気がまるで嘘のように、金政権は地盤沈下の憂き目に会ってしまった。政権後半の行方を左右する総選挙を目前に控えた今、これは誰が見ても危機的状況である。
こうした中で、金大統領は今年一月二〇日、国民会議を発展的に解消させる形で、新党「新千年民主党(民主党)」を結成し、自ら総裁となった。連立与党を組む自民連との協調で、かろうじて議席の過半数を得るという政治基盤の弱さに加えて支持率急低下では、とても四月の総選挙には勝てないという危機感が新党をつくらせたのである。