記事(一部抜粋):2000年2月掲載

社会・文化

農水省疑惑「捜査頓挫」の舞台裏

大山鳴動して「課長補佐」ひとり 

 昨年夏以降、新聞などでも取り上げられていた農水省を巡る汚職疑惑がいよいよ大詰めを迎えている。おそらく本誌発売時点ではある程度の結果が出ているものと思われるのだが、実はここに至るまでには、一連の報道でも表に出ていない様々な紆余曲折があった。疑惑の発端から捜査の経緯まで、一連の農水省汚職疑惑について水面下の動きを振り返ってみる。
 暮れも押し迫った昨年十二月二十七日、農水省はいわゆるキャリア官僚三人を含む十八人の職員の処分を発表した。とくに刑事事件として司直の摘発を受けたわけでもないのに、これだけ大掛かりな処分を断行したのは、霞が関の中央省庁全体の中でも過去に例のないことである。
 農水省が発表した処分の理由は、「職員と関係業者との間で、省内の倫理規定に照らして不適切な関係があったため」(高木勇樹事務次官)ということになっているが、結果的にこの処分は、警視庁捜査二課、東京地検特捜部など捜査当局の動きに大きな影響を及ぼすことになる。
 念のため、その処分の内容にもざっと触れておくと、最も重い処分である六カ月間の減給一〇分の一を受けたのは上甲継男・構造改善局農業経営課長補佐で、比田井勇・同局農政課長補佐が同じく三カ月、佐藤正人・関東農政局生産流通部次長と佐々木博志・同局構造改善課長が二カ月、田本友広・同課長補佐が一カ月といったところで、以下、訓告や厳重注意などが数名である。
「この処分が最も大きな影響を与えたのは、東京地検特捜部です」と解説するのは、さる大手紙の司法記者。
「この処分が発表された時点で、事実上、特捜部の方で農水省関係の汚職事件立件の動きは完全に止まりました。すでにその前の時点で特捜部の方では事件化はしないのではという見方が強まってはいたんですが、内部でケジメをつけたということで内偵もやめてしまったようなんです」
 一方の警視庁の方は、ある捜査関係者がこういう。「逆に警視庁捜査二課の方では、動きが慌ただしくなっています。大きな理由はふたつ。……」

 

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