自民党郵政族の大物は、こう言い切った。「NHKが、郵政省のお墨付きで安心してハイビジョン放送に注力していたら、それが試験放送から抜け出せず実用放送に到らぬうちに、お上(郵政省)はデジタル放送に宗旨替えしていた」。
NHKテレビの画面には時々、「ハイビジョン撮影」という文字が現れる。試しに様々な世代の視聴者に聞いてみると「別に画面が変わるわけでもなく、あれは一体なんですか」という反問が一様に返ってくる。
NHKがハイビジョンの試験放送を開始したのは1994年のことだが、郵政省関係者によると、開発に取り組みはじめたのははるかに古く、実に60年代に遡るという。
「だから、NHKがハイビジョンにいくら注ぎ込んだかは、監督官庁や国家はおろか、NHK自身もよく分からないほど膨らんでいる」(自民党の郵政大臣経験者)
60年代には、インターネットも多チャンネル化も姿を現していなかった。その時代にハイビジョン開発に手を染めたのは、今で言うコンテンツ(放送の内容)の充実こそがやがて問われると見越した、先駆的取り組みであった。