正式には科学技術庁の所管で、認可も同庁から下りているのだが、そこで蠢く利権は郵政省に帰属し、名を連ねる理事も郵政省と深い関わりを持つ者ばかりという不思議な財団法人が、東京の四谷にある。
「海洋都市開発研究会」というのがその財団法人の名称。1987年12月の設立で、代表を務めるのは関西の最高級住宅地、芦屋に住む寺井精英なる人物だ。
この寺井氏の名を聞いて「ああ、あの先生か」と思い当たる人も少なくないだろう。造船業界では非常に名の通った人物なのである。
大阪大学造船学科を卒業後、川崎重工業を経て電電公社(現NTT)に入り、その後、電気通信大学の教授に就任。その間、61年に造船協会日本造船工業界賞、69年には日本造船工業会長賞、さらには運輸大臣賞など数々の権威ある賞を受賞しているのだ。同氏を知る造船業界関係者が言う。
「特にアーク溶接では世界的権威。というよりその技術の生みの親といってもいい。高度成長期の日本を支えた造船業界。その技術の屋台骨を支えた人です」