政 治
ふくらむ「有事景気」への期待感
戦後、抑圧したものの回帰を促す自自公連立という「有事連合」
「この国のかたち」を大きく変える重要法案が、ほとんど軋みも立てず国会を疾駆していく。「真空総理」小渕恵三首相の柔和な表情と、「難物」法案を相次ぎ処理していく剛腕政治との間に存在するものは何だろうか。その不思議な距離感を、皮膚感覚として実感できない多くの国民はおそらく目眩に襲われたような不安感に陥っている。
スイスイと国会を通過していった重要法案の右代表は五月に成立したガイドライン関連法であった。日米安保協力の実効性を高め、つまるところ米国の軍事的属国化を図るこの法律は、社民党、共産党の反対を一蹴して可決、成立した。
さらに、国民総背番号制につながると気づかわれる「住民基本台帳法改正案」、国民のプライバシーが侵されると悪法の槍玉にあげられた「盗聴法案」、憲法改正論議の推進役を演じる「憲法調査会設置のための国会法改正案」、国家意思の下に国民を統合させようとする「日の丸・君が代法制化法案」、企業の事業再構築(リストラ)を支援するという戦前・戦中の統制経済を想起させる「産業再生関連法案」などが今国会での成立を待っている。
外向きにしろ内向きにしろ、日本の大改造を推し進めるこれら重要法案の連鎖は、「戦後政治の総決算」「普通の国」といった国民の目に見える形で事が進んでいないだけに、ある不気味さが漂う。